感謝 -MattyIce-
フランチャイズの歴史が変わる日
本日,ファルコンズのQBを14年間努めたマット・ライアンがインディアナポリス・コルツへトレードとなりました.
ライアンのリストラクチャを取り下げ,QBデショーン・ワトソンを獲得しに行った時点からある程度覚悟してはいましたが,とうとうこの日が来たかという気持ちです.
本記事ではコルツファンの方含め,多くのNFLファンの方にライアンの魅力を知ってもらうために,これまでの輝かしい(?)キャリアを振り返っていきたいと思います.
なお,私が応援し始めたのは2016年からなので,それまでの経歴については上っ面な内容になってしまう点はご了承ください.
ライアンのこれまでのキャリアを振り返る
第1章「胎動-アトランタの救世主」2008
2007年シーズン開幕前,当時ファルコンズのスーパースターであったQBマイケル・ヴィックが闘犬賭博で逮捕されるという衝撃的なニュースがありました.さらに,エースを突然失っただけでなく,その年就任したHCボビー・ペトリーノはわずか13試合で辞任.直前にオーナーのアーサー・ブランクに残留を約束していたにもかかわらず,一方的に辞めたことは当時かなりの批判を集めたそうです.結局その年は4勝12敗に終わり,暗黒期の一歩手前というチーム状況で転機は訪れました.
2008年ドラフト全体3位でボストンカレッジからマット・ライアンを指名.当時を知るファンの話では,その年のQBではベストだけどトップ5級ではないという評価だったようです.元INDのQBアンドリュー・ラックやJAXのQBトレバー・ローレンスのような全体1位確定レベルではないということですね.
しかし,ライアンは全体3位という大きな期待にすぐに答えました.NFL初先発となった2008シーズンWeek1,キャリア1本目のパスで66YdsのTDパス.アトランタの暗い空気を一気に吹き飛ばす最高のデビューを飾りました.
その後も勝利を積み重ねていき,ルーキーながら11勝5敗という素晴らしい成績を収めて攻撃最優秀新人に輝きました.さらに,11勝のうち4試合でgame winning driveを決めるなどその勝負強さも光っていました.
↓ルーキーイヤーのハイライト.
Matt Ryan's OROY campaign in 2008. @M_Ryan02 pic.twitter.com/VUInPz05xd
— NFL Throwback (@nflthrowback) 2022年3月21日
第2章「相棒-究極のホットライン」2009-2012
ルーキーイヤー以降も9勝5敗→13勝3敗→10勝6敗と安定して勝利を重ねていき,リーグトップクラスのQBに.
その中でライアンのキャリアにとって最も大きな影響を与える選手と出逢います.それが2011年にアラバマ大から全体6位で指名したWRフリオ・ジョーンズ.フィジカル,キャッチ力,スピードを全て兼ね備え,ライアンと共にNFL史に残る最強のホットラインを形成しました.また,フリオに加え,当時のエースWRロディ・ホワイト,殿堂入りTEトニー・ゴンザレスなど豪華なレシーバーを擁し,ライアンはリーグ最高峰のパサーへと成長していきました.
しかし,レギュラーシーズンの活躍に反して,プレーオフでは2011年まで0勝3敗と奮わず.その中で,キャリア前半のハイライトとも言えるのが,2012年でした.
2012年はこれまででキャリアハイの成績を残し,13勝で第1シードを獲得.そして,ディビショナルラウンドでSEA相手に4th Quarter comeback & game winning driveを決め,プレーオフ初勝利.今年はライアンの年かと思われましたが,カンファレンスチャンピオンシップでSF相手に大逆転負けを喫してスーパーボウルには届かず.(その年の主役は同期のフラッコでした)
ちなみにキャリアの最初の5年での勝利数56というのは歴代1位タイです.(ブロンコスQBラッセル・ウィルソンと並んでいます)
第3章「覚醒-鬼才OCとの出逢い」2013-2016
スーパーボウル出場を逃して以降13年14年はチーム成績が落ち込み,デビューから共に歩んできたHCマイク・スミスとも決別.
そして,2015年から新たなHCに就任したのが,それまでSEAでDCを務めていたダン・クインでした.1年目は開幕5連勝と最高のスタートダッシュを切りながら,そこから急激に失速し,8勝8敗止まり.
そして2016年,私がライアンとファルコンズに出会った年.ライアンはキャリアイヤーを迎えることになります.当時のOC(2年目)で現SFのHCカイル・シャナハンの元,ライアンおよびファルコンズオフェンスが完全覚醒.ライアン-フリオの最強ホットラインに加え,WRモハメド・サヌー,テイラー・ゲイブリエル,TEオースティン・フーパー,ロビン・トゥイロロ,RBデボンタ・フリーマン,テビン・コールマンと今見ても惚れ惚れする陣容.平均33.8得点はNFL歴代8位であり,シャナハンにとってもキャリアベストのオフェンスだったのではないでしょうか.
この年のライアンは4944Yds,69.9%,38TD,7INT,rate 117.1という圧倒的な成績を残しシーズンMVPと攻撃最優秀選手を受賞,オールプロにも選出されました.特にYds/Attempt 9.3(翌年の成績との相関が高いスタッツ)というのは16試合出場したQBでは現役でこの数字を超えた選手は一人もいません.
Matt Ryan's 2016 MVP season was something special.
— NFL (@NFL) 2022年3月21日
Now time to bring those talents to Indy.@M_Ryan02 | @Colts pic.twitter.com/YwyZ5zI2zu
レギュラーシーズンは11勝5敗で地区優勝.プレーオフでも勝負強さに関する周囲の懸念を一蹴し,圧倒的なパフォーマンスでチームをスーパーボウルへ導きました.プレーオフでは3試合で338Yds/Game,71.4%,9TD,0INT,rate 135.3, Yds/Att 10.3と歴代でも屈指の好成績を残しました.特にスーパーボウルでのrate 144.1は歴代4位であり,2016年はマット・ライアンの年だったと言えると思います.なぜかアトランタにロンバルディトロフィーが届いていないようですが.
第4章「衰退-哀しみの別れ」2017-2021
2017年以降はライアンにとって厳しいシーズンが続きました.
まず,2017年は最強のオフェンスを作り上げたカイル・シャナハンがSFのHCに.タレントこそ残ってはいましたが,オフェンスは全く機能せずライアンの成績も大きく落ちてしまいました.(Ydsは4944→4095,TD/INTも38/7→20/12)
タレントの個の力と粘り強い守りでなんとか10勝6敗でプレーオフ出場(1勝1敗)には漕ぎ着けたものの,最後までオフェンスが目覚めることはありませんでした.
そこからは悪夢のようなシーズンが続きます.2018年から2021年まで7勝9敗→7勝8敗→4勝12敗→7勝10敗とキャリア最長となる4シーズン連続負け越し. 特に,ランオフェンス,OL,ディフェンスが常にリーグ最底辺で,サラリーキャップもないという地獄のような状態が続いていました.それに起因して,直近3年のライアンの個人成績はabove averageくらいで安定はしていたものの,決してリーグトップクラスと呼べるものではありませんでした.
そして2022年3月,ファルコンズは長年チームの顔であったライアンをINDへ2022年のドラフト3巡を対価にトレードすることを発表.キャリア終盤を迎えたライアンの花道を作るべくオールインして欲しかったですが,サラリーキャップがそれを許しませんでした.
ライアンの魅力
ここまでライアンのキャリアを振り返ってきましたが,実際のところライアンってどんな選手なの?と思う方も多いと思います.他のチームのファンでわざわざ弱いファルコンズのハイライトを見る方も少ないでしょうし,最近NFLを見始めたファンにとっては誰?という印象の方もいるかもしれません.そこで,あくまで素人視点ですが,ライアンの魅力と凄さについてまとめていきたいと思います.
当ブログではライアンの毎シーズンの振り返り記事も書いているので詳細な情報が知りたい方はそちらをご覧ください.
良いところ
・パスの正確性
パス成功率がずば抜けて高いというわけではありませんが,ここ数年様々なQBとのマッチアップを見てきて感じていることです.非常に綺麗なスパイラルのパスを絶妙な位置にピンポイントで落とせるので,WR陣のパワーも引き上げることができます.特にdeep ball completion %は昨年47.8%でリーグ上位でした.
・勝負強さ
これに関してはあの試合のせいで「は?」と思う方も多いかもしれません.しかし,game winning drive数42は歴代7位タイ,現役ではブレイディに次ぐ2位です.今シーズンも4試合決めています.
・耐久性
ライアンは14年間でたった3試合しか欠場がありません.特に最近は脆弱なパスプロの下,被サック数は毎年リーグ上位ですが,それでも大きな怪我をすることなく毎試合安定したパフォーマンスを見せてくれます.
・リーダーシップ,人間性
私は直接会って話したわけでもないですが,これは間違い無いと思います.勝っても負けてもインタビューへは常に真摯に対応しますし,チームに対して批判的なコメントをしているのは見たことがありません.今回のトレードでも,ファルコンズがワトソンを獲りに行く姿勢に理解を示し,自身のサインボーナスが発生する期限日を遅らせる対応を見せました.これはなかなか他の選手に真似できるものでは無いと思います.
他にもディフェンスの読みが一流という話も聞きますし,モビリティはないもののプレーが崩れたときに機転を利かせることもできます.特に後者はファルコンズOLに鍛えられた部分です.
コルツのようにOLとランに強みを持っているチーム(ファルコンズとは対極)でどんな活躍を見せてくれるのかは正直めちゃくちゃ楽しみです.
悪いところ
・スニークが下手
・ボールを持ちすぎる
・モビリティはほぼなし
コルツ攻撃陣のリーグ全体での位置づけは把握できていませんが,少なくとも今のファルコンズよりは500倍良いと思うので,下の2つはそこまで大きな懸念材料では無いのかなと考えています.ただ,スニークはマジで下手です.
記録
細かく調べる時間がないので,Twitterでの拾い物を共有します.
#Falcons Matt Ryan’s PFF passing rank by season:
— Evan Birchfield (@EvanBirchfield) 2022年3月21日
• 2021 - 13th
• 2020 - 9th
• 2019 - 14th
• 2018 - 10th
• 2017 - 2nd
• 2016 - 2nd
• 2015 - 8th
• 2014 - 5th
• 2013 - 12th
• 2012 - 7th
• 2011 - 6th
• 2010 - 7th
• 2009 - 18th
• 2008 - 2nd
He’s never been the problem.
Matt Ryan has been one of the most productive QBs of the Next Gen Stats era (since 2016), ranking 5th in both pass success rate (47.7%) and total passing EPA (+343.8).
— Next Gen Stats (@NextGenStats) 2022年3月21日
Ryan is one of two QBs (Russell Wilson) to complete more passes than expected in every season of the NGS era. https://t.co/1Ib1bXFTO0 pic.twitter.com/0KKJq3CpBM
Matt Ryan is elite when kept clean 🧼
— PFF Fantasy Football (@PFF_Fantasy) 2022年3月21日
And his new offensive line is pretty good pic.twitter.com/OObV96ipYG
That's not enough to show how good he was. Lets look at ALL TIME NFL RANKS
— CC (@TheActualCC) 2022年3月21日
Wins - 11th
Pass Yds - 8th
Pass TD - 9th
Completions - 7th
Attempts - 9th https://t.co/RPFQBs0QmF
After 222 starts for the #Falcons, Matt Ryan has reportedly been traded to the Colts. His current all-time ranks:
— ProFootballReference (@pfref) 2022年3月21日
7th in game-winning drives (42)
7th in passes completed (5242)
8th in passing yards (59,735)
9th in passes attempted (8003)
9th in passing TDs (367)#Colts | @Colts pic.twitter.com/4urgj0kOZP
ライアンのキャリアベストゲームTop5
言葉よりもプレーを見る方が早い!ということで."2016年以降で",私的ライアンベストゲームトップ5を紹介します.見たことないという人もいると思うので,コメントは適当にスルーしてハイライトを見ていただけると幸いです.
第5位 2016年 Week8 パッカーズ
第4位 2021年 Week9 vs セインツ
アトランタでの最後の輝き.
第3位 2019年 Week15 vs 49ers
ライアン-フリオのホットラインの凄さを実感した試合です.
第2位 2016年 Week4 vsパンサーズ
私がファルコンズファンになるきっかけとなった記録的な試合です.
第1位 2016年 NFCC vsパッカーズ
これはライアン自身もベストゲームと言っている試合です.特に6:03からのシーンは私が一番好きなシーンです.
Packers vs. Falcons | NFC Championship Game Highlights - YouTube
お気持ち表明
Twitterでもお気持ち表明しましたが,マット・ライアンという選手は私にとって本当に特別な選手です.
ファルコンズファンになるきっかけであり,毎週ライアンのプレーを見るのが本当に楽しみでした.2018年にはライアンを見るために一人で現地に乗り込むほど好きな選手です.
これまでずっと,アトランタでチャンピオンになってキャリアを終えて欲しいと強く願っていました.しかしここ数日の間で,「ファルコンズにいること」と「プレーオフに再び出ること」を両立するのが難しいチーム事情では,間違いなく後者を優先させるべきと思うようになりました.前者はファンのエゴです.
なので,このトレードに関しては(対価から目を背けながら),ワトソン問題から覚悟を決めていましたし,納得しています(対価から目を背けながら).
ここからライアンは貧弱なファルコンズから解放され,悲願のスーパーボウル制覇を目指してキャリアの最終章を迎えます.私はファルコンズファンを変えるつもりはありませんが,来シーズンはおそらくタンクの年になるので,毎週コルツの試合をライブで応援しようと思います.
最後に,コルツファンの皆様,ライアンは本当に素晴らしいプレーヤー,リーダーです.活躍を期待しておいてください!