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【MattyIce通信2021】シーズンまとめ

 2021シーズンの定期更新のラストはMattyIce通信シーズンまとめということで,ファルコンズQBマット・ライアンの今シーズンの活躍?を振り返っていきます.(先週の通信簿と若干内容が被ってるかも)

 去年の振り返りはこちらからどうぞ.

majoranafalcon.hatenablog.com

 

2021シーズンのスタッツ

主要スタッツ

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*()はリーグ内順位(INTは多い順)
 まずは基本的なスタッツから.

 ライアンの近年の傾向は「パスを投げてる割にはTD数が伸びない」でしたが,今年は没個性的なスタッツに.

 昨年も決して良いとは言えない成績でしたが,今年はそれすらも下回る成績となり, 特に今シーズンから17試合制になったにもかかわらず,パス成功数(Comp),アテンプト(Att),獲得Yds,TDといった積み上げ式の数字が軒並み減少.キャリア全体で見ても

  • Yds/Gameは233.6Ydsはこれは過去11シーズンでワースト
  • パスTD20は2017年と並んでキャリアで2番目に悪い数字
  • パスでの1stDown数195は過去12シーズンでワースト
  • Yds/Att 7.1は2013年以来ワースト

とまあ悲惨なシーズンでした.

 昨年までの課題であり,今年改善が期待されていたレッドゾーンTD%は2020年53.45%(26位)→2021年53.70%(24位)とほぼ変わらずでした.レッドゾーンにおけるライアンのスタッツも

2020年:40/80,50.0%,242Yds,19TD,1INT

2021年:43/83,51.8%,317Yds,18TD,0INT

ということで見事なまでにほぼ一定.

 

今年達成した主な個人記録

  • Week2 キャリア14年でのパス獲得Ydsが歴代1位に
  • Week5 史上2番目のスピードで通算パス成功数5000に到達(歴代で7人目)
  • Week9 4Qでの逆転勝利数(33)がマリーノと並んで歴代7位Tに
  • Week9 パス300Ydsかつインターセプトなしの試合数(36)で歴代5位に
  • Week9 パス300Yds以上投げた試合数(73)がリバースと並んで歴代4位に
  • Week16 Game Winning Drive(42)がスタフォードと並んで歴代7位Tに
  • Week18 通算パスTD数(367)がEマニングを抜いて歴代9位に

ちなみに,連続シーズンパス4000Ydsの記録は今年で終了.非常に残念.

 

Mattyiceはオワコン?

 ここまでは今シーズンの主要スタッツがキャリアでもかなり悪い方だということを述べてきました.国内外のファルコンズに言及している様々な記事を見ても,ライアンの将来は必ずと言っていいほどトピックにあがります.

 上で述べたスタッツや直近数年の成績"だけ"見れば新たなQBを探すプランは理解できます.しかし,2016年MVP,通算勝利数史上11位,あらゆるスタッツで歴代上位に残るフランチャイズ史上最高のQBの後釜がすぐに見つかるのかという問題もあります.(あとキャップの問題も)

 ということで「ライアンは本当にオワコンなのか?」というのがここからのテーマです.

 

サポーティングキャストはやっぱり大事

 まず,今年の成績に最も影響を及ぼしたのは周りのタレントレベルであることに間違い無いでしょう.特に,10年間NFL歴代最強クラスのホットラインを組んだ殿堂入りWRフリオ・ジョーンズ(現タイタンズ)が去った影響はやはり大きかったです.全盛期はどんなチーム相手にも勝ち筋を作れるホットラインでしたからね.

 そしてもう一人の大きな損失はWR#18カルビン・リドリーです.昨シーズンはフリオがハムストリングの怪我に苦しむ中,1374Yds,9TD,All-Pro 2nd team選出という素晴らしい成績を残し,2021年のエースとして期待されていました.しかし,今年は開幕から低調なパフォーマンスが続き,11月にはメンタル面の治療のためにフットボールから離れると表明.そのまま復帰することなくシーズン終了となりました.

 しかし,失ったばかりではありません.今年のドラフト全体4位で指名したTE#8カイル・ピッツは新人TE史上歴代2位の1026Ydsの成績を残し,新加入のベテラン#84コーダレル・パターソンはランYdsチーム1位,パスYdsチーム3位と大車輪の活躍.

 実際この2人は"シーズン前半は"フリオ&リドリーの穴(リドリーは一部出場していますが)を埋められていたと思います.先週も述べましたが,Week10のカウボーイズ戦までのライアンのスタッツは

4勝4敗 YPG269Yds 成功率69.4% 15TD 6INT Rate 98.1

とYdsは例年より若干少ないですが,それ以外はむしろ例年以上のペースでした.勝率も5割とまだ希望は持てました.しかし,カウボーイズ戦以降は

3勝6敗 YPG 201Yds 成功率64.1% 5TD 6INT Rate 81.4

と虚無に.これと明らかに関係しているのがパターソンのパス獲得Ydsです.前半8試合のレシービング成績は459Yds,5TDだったのに対して後半8試合は89Yds,0TD. 

つまり,シーズン後半はパターソンがOffensive weaponよりはRB1に近い起用法となったことでパスターゲットが1枚減り,それを補うWRも出てこなかったことがライアンの成績低下で直結しているのではということです.実際,数字でなくとも試合を見れば後半のパスターゲット不足は明らかでした.

 

 レシーバーの問題以上に重要なファクターがオフェンスライン(OL)です.シーズン中の記事でもほぼ毎週ボロッカスに書いていた通り,今年は本当に酷かった.OLの動きはよくわからない素人の私でさえ酷いと感じるレベルです.ぶっちゃけOLへの文句はもう書き飽きたのでこれ以上深入りしませんが,今のOLではNFLのどのポケットパサーでも安定して勝つのは難しいと思います.

 

 ファルコンズの低迷の原因は沢山ありますが,その中でライアンの過失の割合がどれだけかを評価するのは単純なスタッツだけでは難しいです.結局QBは勝率が全てという考えの人にとってはここまでの話はとるに足りない議論だと思われるでしょうが,やっぱり私はライアンを諦められないのです.

 

ライアンと真剣に向き合う

 ここからは,(フリーでアクセスできる範囲で)アドバンスドなスタッツを眺めながら,もう少し深掘りしていきます.最近頻繁に話題に上がるアナリティクスに関しては私はあまり明るく無いのでその辺りはご理解いただけると幸いです.

 

 まずPFFグレードvsPredictive EPA + CPOE indexを見ていきたいと思います.これら2つの指標は数ある指標の中でも翌年のQBのパフォーマンスとの相関が強いそうです.

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https://mfootballanalytics.com/2020/08/29/creating-a-model-for-quarterback-rankings-in-2020/

 こうして見るとYards/Attemptがシンプルながら有意義なスタッツであることが分かりますね.

 まず,PFFグレードは試合展開を加味した上で全てのプレーに対して加点減点を行い評価する指標です(Appendix 参照).

 また,Predictive EPA + CPOEは2つの指標の和になります.前者のEPAはExpected Points Addedの頭文字をとったものであり,直訳すれば「得点期待値がどれだけ増えるか」という意味になります(Appendix 参照).要はプレーの開始前と後で得点期待値がどれだけ変化したかを示す指標がEPAとなります.後者のCPOEはCompletion Percentage Over Expectedの頭文字で,「実際のパス成功率」から「期待されるパス成功率」を引いたものになります.期待されるパス成功率は以下の変数から計算されています.

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https://www.the33rdteam.com/cpoe-explained/

 PFFグレードとEPAに関しては簡単な例を最後のAppendixで説明していますので,興味があればそちらをご覧ください.

  PFFグレードを縦軸に,EPA + CPOEを横軸にとった散布図が以下になります.

 全体としてなかなか良い相関が出ており,プレーオフに進出したQBの多くが右上にいることが分かります.では肝心のライアンはというと若干PFFグレードの方が高いですが,ほぼど真ん中......

 

 また,一つ前のデータと同じくBen Baldwin氏(@benbbaldwin)がTwitterに投稿していた「Big-time throw(難しいかつ価値の高いパス)」vs「turnover-worthy plays(ターンオーバーにつながるリスクのあるパス)」を見てみたいと思います.

 ライアンは赤い線の交差点(おそらく平均値)に最も近いところに位置しています.シーズン中の記事でも述べた通り,信頼できるレシーバーが不足していることに起因して,ライアンが思い切りよく投げ込めない状態が続いていましたです(特に後半).つまり,リスクを犯さない代わりにビッグプレーも狙わないという傾向がはっきり現れているといえます.

 

 ここからは,様々な指標に関してNFL全体での順位とライアン自身の他のシーズンとの比較を行なっていきます.比較対象はMVP&スーパーボウル進出の2016年と昨シーズン2020年です.(DVOAはデータ閲覧のためのアカウント作成が面倒だったので割愛)

【参考サイト】

 

2016年:92.2(2位)

2020年:83.1(11位)

2021年:75.8(16位)

キャリアを振り返ると実はライアンのPFFグレードは安定して高いのですが,今年は2009年以来ワースト.

 

  • Total QBR

2016年:83.4(1位)

2020年:73.6(13位)

2021年:46.2(21位)

 ESPNが提供しているTotal QBRはEPAをもとに,パス,ラン,ターンオーバー,サックなどのQBが関与する全てのプレーの試合への貢献度をシチュエーションを踏まえた上でとして評価した指標です.平均は50前後で75前後でプロボウル級という目安.QBのランプレーも評価に含まれるので,先ほど掲載した画像にある通り,賛否のある指標です.今年は1位のロジャースですら68.9とデフレ気味ですが,ライアンは例年の基準なら平均以下という評価に.

 

2016年:0.206(1位)

2020年:0.106(19位)

2021年:0.070(21位)

 

2016年:+291.6(1位)

2020年:+151.8(8位)

2021年:+67.5(17位)

 

2016年:+0.327(2位)

2020年:+0.143(16位)

2021年:+0.028(22位)

 

  • CPOE

2016年:+6.9(1位)

2020年:+1.2(17位)

2021年:+1.8(14位)

CPOE以外はほぼ全て平均以下という悲しい結果に......

 

 その他気になったスタッツ

  • Deep ball attempts

2016年:68(16位)(ビッグプレーはYAC由来が多いから?)

2020年:76(2位)

2021年:46(23位)

 

  • Deep ball completion %

2016年:48.5%(2位)

2020年:40.8%(18位)

2021年:47.8%(3位)

ディープボールのアテンプトは少ないけどパス精度自体は良いという印象でしたが,実際の成功率もとても良かったようです.

 

  • Pressured completion % & Clean pocket completion %

2016年:41.9%(4位) & 76.8%(4位)

2020年:40.2%(19位) & 74.9%(17位)

2021年:53.8%(4位) & 70.0%(18位)

 

  • Protection rate

2016年:データなし

2020年:81.4%(23位)

2021年:74.7%(33位)

悲惨なパスプロ下でも高いパス成功率は評価できますが,クリーンポケットの精度は物足りないですね.

 

  • Yards per attempt & Air yards per attempt

2016年:9.3(1位) & 9.0(10位)

2020年:7.3(19位) & 8.4(8位)

2021年:7.1(18位) & 7.1(30位)

 

  • Receiver Yards after catch per target

2016年:データなし(多分NFLトップだと思う)

2020年:2.68(73位!?)

2021年:3.21(56位)

 2016年の映像を見るとレシーバー全員のYACの意識が非常に高いなと感じます.

 

Dropped passes

2016年:データなし

2020年:37(3位)

2021年:33(7位)

 

以上,ひたすらスタッツを列挙してきましたが,まとめると

「スタッツは平均的(かそれ以下)だが,プレッシャー下やディープのパス精度に強みがあると言える」

選手と結論づけられます.主要スタッツは悪いけど実はアドバンスドな指標では優秀な評価なのではないかという期待を寄せて熱心に調べましたが,悪い意味で印象通りの結果でした.

 

 では,この章の主題である「ライアンはオワコンか?」という問いに対する答えですが,私は「オワコンとカムバックの分岐点に立っている」と考えています.スタッツや指標が平均的というのも勿論ですが,そもそもD#を筆頭にチーム状況が悪すぎます.これは私の感覚的な話ですが,同じ面子のO#でも味方のD#がリーグ上位か底辺かでO#のパフォーマンスは変わってくるのではないかと思います.D#のボロを補って余りあるハイパーO#もありますが,私の観戦歴を振り返ってもかなり稀です.

 今現在のライアン一人の実力を正確に評価するのは非常に難しいです.結局いつもと同じ結論になるわけですが,まずはD#やO#のサポーティングキャストを最低限整えることが先決です.その上で,「ライアンのパフォーマンスが悪かったせいで負けた」と感じる試合が多くなってきたら,それが本当のオワコンアラートだと思いますし,指標にも明確に現れてくるのではないかと思います.(ライアンの契約満了までにそのレベルまで持っていけるかは正直かなり怪しいです.)

 

来年に向けて

 ここ数年はチームが勝てなくてもライアンのスタッツを見て精神の安定を図っていましたが,今年はスタッツもここ10年でワーストに近い内容で正直かなり残念なシーズンでした.試合数も増えましたし,さすがに4000Ydsの記録が途切れるとは思ってなかったです.

 ただ,シーズン前半のようなパフォーマンスが通年でできれば,まだまだ第一線で戦えるQBです.もう一度,ライアンでプレーオフへ!!!(来年とは言ってない)

 

【宣伝】オンラインオフ会やります

 2月に「ファルコンズのオフシーズン戦略会議」略して「オフ会」を開催させていただくことになりました!!!

 まだ詳細は決まっていませんが,タイトル通りファルコンズの未来をフロントになったつもりで議論し合う超マニアックなイベントとなる予定です.とはいえ,私の1番の望みはファン同士でワイワイ喋ることなので,勿論ファルコンズファンでなくとも気軽にご参加頂けたらと思っています.

 興味ある方はTwitter(@majoryan0923)の固定ツイートの引用元に告知がありますのでそちらに反応していただけると幸いです.

 

Appendix

PFFグレード

例えばQBの場合,良いパスがレシーバーのミスによってインコンプリートになった場合はプラス,逆に結果的にインコンプリートでもインターセプトになる危険性のあるパスを投げた場合はマイナスの評価になります.目安としては90-100がエリート,85-89がプロボウラー,70-84がスターター,それ以下はバックアップ.

 

EPA

参照したサイトの例を参照すると,チーフスが自陣25Yd地点からドライブを開始した場合,その時点での得点期待は1.06点になります.もし,QBマホームズが15Ydsのパスを成功させ,チーフスの40Yd地点での1st&10となった場合,得点期待値は1.88に増加します.このとき,15YdsパスのEPAは1.88-1.06=0.82ということになります.逆に15Ydsではなく,サックされて-10Ydsとなった場合は2nd&20での得点期待値は-0.54となり,このプレーのEPAは-0.54-1.06=-1.6となります.